憧憬・古代ギリシャ

〜「しっかり学ぶ初級古典ギリシャ語」学習ノート〜

ギリシャ文字と発音

第1課はギリシャ文字と発音です。

ギリシャ文字は、星座以外にも数学や物理などでよく使われているので、馴染みはあるのですが、読みが微妙に違うので、注意しましょう。

エ・プシーロンは、イプシロンですよね。パソコンでもイプシロンで辞書登録されていますが、ギリシャ文字の読みとしては、違うようです。

 

ギリシャ文字のアルファベット>

大文字
小文字
名称 音価 備考
Α
α
アルファ [a]  
Β
β
ベータ [b]  
Γ
γ
ガンマ [g] または [ŋ]  
Δ
δ
デルタ [d]  
Ε
ε
エ・プシーロン [e]  
Ζ
ζ
ゼータ [zd] 英語の wisdom の sd
Η
η
エータ [ɛː]  
Θ
θ
テータ(シータ) [tʰ]  
Ι
ι
イオータ [i] または [iː]  
Κ
κ
カッパ [k]  
Λ
λ
ラムダ [l]  
Μ
μ
ミュー [m]  
Ν
ν
ニュー [n]  
Ξ
ξ
クシー [ks] 英語の x に相当
Ο
ο
オ・ミークロン [o]  
Π
π
ピー(パイ) [p]  
Ρ
ρ
ロー [r] 巻き舌で発音する
Σ
σ / ς
シーグマ [s] または [z]  
Τ
τ
タウ [t]  
Υ
υ
ユー・プシーロン [y] または [yː] ドイツ語の ü の音
Φ
φ
ピー(ファイ) [pʰ]  
Χ
χ
キー(カイ) [kʰ]  
Ψ
ψ
プシー [ps]  
Ω
ω
オー・メガ [ɔː]  

 

パソコンの辞書でひと文字ずつ変換していては、大変なので、キーボードをギリシャ文字配列に切り替えます。私の環境はMacなので、環境設定で Greek Polytonic を有効にしました。

下図は、自分が分かりやすいように、キーボードへの割り当て文字を整理したものです。(キーボードひとつひとつ叩いて確認しました)(汗

f:id:p-in:20210329125154j:plain

暫定・ギリシャ文字のキー配列(クリックで拡大します。PCのみ)

キーの下の方が、普通に入力した場合です。上の方は、シフトを押した場合です。2つある場合は、大抵は右側がオプションを押した場合ですが、実際は、これに気息記号、アクセント記号などのバリエーションが沢山あります。まあ、こういうのは、慣れが必要ですね〜。

一番迷ったのは、以外にも?長音記号でした。Macの場合は、Option+シフト+Lの後に母音「α, ι, υ」を押します。長母音の出現頻度が、ぱっと見、ラテン語より少ないようですが、ちとややこしいキーです。

 

ということで、ちょっと馴れてみましょう。

【練習問題1】

  1. λογος(ロゴス)言葉
  2. προλογος(プロロゴス)プロローグ
  3. ποιητης(ポイエーテース)詩人
  4. μῡθος(ミュートス)神話
  5. σοφιᾱ(ソピアー)智恵
  6. αυτος(アウトス)自身
  7. δουλος(ドゥーロス)奴隷
  8. δεσποτης(デスポテース)
  9. φωνη(ポーネー)声
  10. ψῡχη(プシューケー)魂
  11. ορχηστρᾱ(オルケーストラー)舞台
  12. αγγελος(アンゲロス)使者

半分くらい間違えました(汗)。ουが「ウー」というのも忘れていました。ψῡ で「プシュー」は難しいです。ちなみに προλογος は po の「ロ」が巻き舌ですね。σ は 語末だと ς となるそうです。

キーボード配列ですが、σ と ς のキーの位置関係は分かりやすいですね。あと、文字の音価でキーの割り当てを考えると、割とスムーズに入力できます。

その点では、以下のキーは英語アルファベットの音価とまったく異なるので、少しとっつきにくいですね。

  • θ(テータ、シータ)→uキー
  • ξ(クシー)→jキー
  • ψ(ファイ)→cキー
  • ω(オメガ)→vキー
  • ς(シーグマ)→wキー

<参考>

ギリシア文字 - Wikipedia

 

 

※古典ギリシャ語のキーボード入力について、以下のページを参考にさせていただきました。感謝!
ギリシャ語を入力する方法
https://masoyagi.exblog.jp/21678424/

Macの場合は、ちょっと違う点もありますので、こちらをどうぞ。助かりました〜。どうもありがとうございます!

ギリシア語のキーボード入力:Mac
https://origine-mundi.xyz/how-to-input-greek-on-mac/

 

 

ギリシャ文字と星座

実は、個人的に、ギリシャ文字そのものには、少年の頃から親しみはありました。それは、星座です。

天体観測が趣味だったので、夜空の星座の星々に付けられたギリシャ文字は、私にとって空気のような存在でした。もちろん、ギリシャ文字のアルファベットだけですけどね。

夜空には、今日、88の星座が定められているのですが、星座を形づくる星には、だいたい明るさの順に、ギリシャ文字が「α」から順に付されています。

f:id:p-in:20210323222009j:plainこれは冬の星座、有名なオリオン座付近の星座ですが、真ん中の三つ星が目印です。オリオン座には1等星が2つあって、右肩のベテルギウスが α(アルファ)星、左足のリゲルが β(ベータ)星です。

続いて、2等星が5つ、左肩の γ(ガンマ)星、右足の κ(カッパ)星、そして三つ星の δ(デルタ)星、ε(イプシロン)星、ζ(ゼータ)星です。

λ(ラムダ)星は、オリオン座の頭の部分にあたります。

η(エータ)星から ι(イオタ)星を結ぶ線は、オリオン座の剣の部分に見立てられています。ちなみに、M43、M42は巨大な散光星雲として、有名ですね。

オリオン座は、古代ギリシャの詩人ホメロスの「イーリアス」にも登場する、最も歴史の古い星座のひとつと考えられています。

ἐν μὲν γαῖαν ἔτευξ᾽, ἐν δ᾽ οὐρανόν, ἐν δὲ θάλασσαν,
ἠέλιόν τ᾽ ἀκάμαντα σελήνην τε πλήθουσαν,
ἐν δὲ τὰ τείρεα πάντα, τά τ᾽ οὐρανὸς ἐστεφάνωται,
Πληϊάδας θ᾽ Ὑάδας τε τό τε σθένος Ὠρίωνος
Ἄρκτόν θ᾽, ἣν καὶ Ἄμαξαν ἐπίκλησιν καλέουσιν,
ἥ τ᾽ αὐτοῦ στρέφεται καί τ᾽ Ὠρίωνα δοκεύει,
οἴη δ᾽ ἄμμορός ἐστι λοετρῶν Ὠκεανοῖο.

Homer, Iliad, Book 18, line 462

そこには大地あり天空あり海がある。疲れを知らぬ陽があり、満ちゆく月、また天空を彩る星座がすべて描かれているーすばる(プレイアデス)に雨星(ヒュアデス)、さらに力強いオリオン、また「熊」座、これは別の名を「車」座ともいい、同じ場所を巡りオリオンをじっと窺っている。この星のみはオケアノスの流れに浸かることがない。(松平千秋訳、岩波文庫ホメロス イリアス 下」p217-218

<オリオン座付近の星座>

f:id:p-in:20210323014548p:plain

Orion_constellation_map.png: Torsten Brongerderivative work: Kxx, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

 

M42・オリオン大星雲>

写真下部の少し明るい星が ι(イオタ)星。

f:id:p-in:20210323041702j:plain

Ole Nielsen, CC BY-SA 2.5, via Wikimedia Commons

 

<オリオン座のギリシャ語>

  • オリオン座
    Ωρίων(オリオン)
  • ベテルギウス(オリオン座α星)
    Μπετελγκέζ(ベテルゲーズ)
  • リゲル(オリオン座β星)
    Ρίγκελ(リーゲル)

μπ で b の音なのかな。

 

<参考>

greeknote.net

 

 

οὐδὲν ἐκ μηδενός ー 古代ギリシャへの憧憬

娘が通い始めた幼稚園の園長先生が、京大のラテン語の先生だったのがご縁で、2年前からラテン語を習い始めたのですが、私のラテン語との出会いは実は半世紀ほど前、とある本(*)の中で紹介されていた「ex nihiro nihil」(エクス ニヒロ ニヒル)という言葉でした。

この言葉、その本の中ではパルメニデスの派のメリッソスの命題「οὐδὲν ἐκ μηδενός」(なにも有らぬものからは生じない)のラテン語訳ということだったのですが、これが読めない。(涙)

で、昨年秋の講座の中で、新春に出版される『しっかり学ぶ初級古典ギリシャ語』(堀川宏著、ペレ出版)を紹介されていたので、楽しみにしていたのですが、さっそく購入させていただきました。

私が、なかなかラテン語学習の成果があがりません、というと山下先生は「例えばアラビア語に初めてふれた人は、読み方も、辞書の引き方もわからないけど、皆さんは、ラテン語の初級文法を学んできて、もうそういうことはないでしょう」という感じで、励ましてくださるのですが、まあ、確かに最近、課題をこなすスピードが(ほんの少し)早くなったような気はいたします。

初級文法クラスのテキスト『しっかり学ぶ初級ラテン語』は、先生のご著書で、ラテン語を学び始めた初学者が、挫折せずに学び続けていけるように、と世に出されたものと思うのですが、先生のお人柄とも相俟って、初級ラテン語のテキストとして大変よく出来ていると感じています。『しっかり学ぶ初級古典ギリシャ語』はその姉妹編?ということで、期待が膨らみますね。

ちなみにこちらの著者の堀川先生は、20年ほど前、山下先生が京大での最後の年に入学してこられたとのことで、京大での最後の教え子ということになるのか、わかりませんが、今回、出版にあたって、山下先生にご紹介いただいたと、堀川先生が巻末に書かれていました。「山の学校」でも講師を務められたことがあるそうで、そういう意味でも、個人的に親しみが持てます。

もともと、私の関心は古代ギリシャ哲学にあるので、ラテン語だけというわけにはいかない気もして、古典ギリシャ語の方も、堀川先生の「しっかり学ぶ」で何とか学びのスタートを切れたらと思っています。

というわけで、さっそく、第1課「文字と発音」、第2課「気息記号とアクセント」を読んでみました。

声に出して読めるということは、大切ですよね。漢字でも「読み」が曖昧だとその字(つまりはその言葉自体)を飛ばして読んでしまいますから。

では、先程のメリッソスの命題を、読んでみましょう。

οὐδὲν ἐκ μηδενός
(ウーデン エク メーデス)

いかがでしょうか? 間違っているかも知れませんが、私としては、あの頃、読み方さえも分からずに飛ばしてしまっていたメリッソス(Μέλισσος)の言葉が、とりあえず何らかの規則で「読めた」ことに、大変感動しています。

もし、時が経って、この学習ノートの最初の投稿を「あらあら」と懐かしく読み返す時がきたら、うれしいですね〜。

 

f:id:p-in:20210214153648j:plain

 

※『現代自然科学と唯物弁証法』(岩崎允胤・宮原将平著、大月書店、1972年)

 

※古典ギリシャ語のキーボード入力について、以下のページを参考にさせていただきました。感謝!
ギリシャ語を入力する方法
https://masoyagi.exblog.jp/21678424/